Interview vol.10 小春[クロマチックアコーディオン]KOHARU[Chromatic Accordion]

 

蛇腹党インタビューVol.10 遂に! ギャラクシー蛇腹エンジェル、アコ―ディオニスト小春さんに迫ります!!!

 

――早速ですが、小春さんはアコーディオンを教室で習うこと、あるいは通わないで独学で学ぶことについてどのようにお考えですか??

 

「そうですね……結局はその人その人の性格によると思いますけど、初心者のほとんどは何がわからないのかがわからない状態じゃないですか。自分の何がダメなところなのか、自分で発見できる人は誰にも教えてもらわなくても上達していくと思うんですけど、大半の人は例えば腰が痛いってなっているのに何が理由で痛いのかがわからないと思うんですよ。アコーディオンを始めた人にYou Tubeなどを通して演奏しているところを全身入れて動画で送ってくださいって言っているんですけど、だいたい皆『この演奏で何か間違っているところありますか?』って質問されることが多いんです。何が正解で何が間違っているのかはわからないけれど、どうやら自分の演奏は何かが違うっぽい、みたいな。それで例えば、もっとリズムキープをしっかりできるようになれば、曲がもっと生き生きと楽しい感じになるよ、とか教えてあげないと『あ、そうなんだ』ってわからないというか。そこに気付ける人ならアコーディオン教室に通わなくても伸びるでしょうけど、そういう人は極稀ですし、演奏がうまくいかない原因がわからない方はやっぱりちゃんと知識がある人が教えてくれるところに学びに行く方が色々と指摘してもらえるのでゆくゆく喜びは多いのかもな、と思いますね。」

 

 

――アコーディオン教室に限らず、業界全体を通して初心者はこの曲を練習するべき、中級者はこの曲、みたいに最初から自由に好きな曲を弾かせてもらえない、という意見もききます。やはり段階を踏むのは大事だと思いますか?

 

「アコーディオン教室に関してまず言うと、そもそも日本にある教室のスタンスとして目指すはプロだ! という感じではないんじゃないかなと。プロを目指して来る人の割合があまりにも少ないから、教室で教えるプランに“プロ育成”という流れがないというか。死ぬまで楽しく演奏できればいいなって人が習いに来る割合の方が圧倒的に多いし、だから練習のペースも遅いんだろうし。今回はこのポルカを弾きましょう、じゃあ次はちょっと早めのポルカを弾いてみましょう、みたいな(笑)。案外、半分以上の人はそれでも達成感を味わっていると思うんですよ。『えー、この課題曲弾きたくないんだよな』っていうよりも『わー、ポルカ弾けたー』っていう。ゆっくり達成感を味わって、人生の最後までアコーディオンでいい感じの音が鳴らせたらいいかな、くらいのモチベーションというか熱量の人が多いもんだから、そうじゃない人からすると何でこんなにゆるいんだろうって思うのかもしれないですけど。もっと本気でやりたい、プロになりたいっていう志で通う人が増えていったら、もしかしたら教室自体の熱量や教える側のマインドも変わるのかもしれませんね。あと、少し話は逸れますが、プロの人たちの多くは段階を踏んでいってるんですけど、その時点でやっぱりちゃんと自分というものを持っている人たちが生き残れているんじゃないのかなと思います」

 

 

――日本でアコーディオンを弾いている愛好者の方々は意外と多いですが、メジャーデビューしているポップミュージックのアーティストはほぼ小春さんくらいしかいないと思うのですが、業界的にはやっぱり革新的というか珍しいですよね?

 

「そうですね……珍しかったんだと思います。一生珍しいって言われるんじゃないですかね。唯一無二、とかもよく言われていて、もう2万回くらいは言われてる気がします(笑)。個性派アーティストとか、チャラン・ポ・ランタンのふたりでしか出せない音楽、とかその3つが多いです。でも、そのせいでポップスというとても聴きやすくて親しみやすいジャンルなのに距離を感じるんですよね。通好み、みたいな言われ方もされますし。全然通好みじゃなくて、普通に楽しいJ-POPなはずなんですけど……。結局知る人ぞ知る、みたいな世界で終わってしまうとそのジャンル含め色々と衰退していってしまうと思うんです。こんなに面白い楽器だし、ギターとかよりも簡単な楽器だと私は思っていて。でも、何でギターがアコーディオンよりもメジャーになったかっていうとプレーヤーが有名になったっていうのと、そのプレーヤーに憧れてギターを始める人が増えたからじゃないですか。良い意味でミーハーな人がすごい増えたから。だからミーハーでもいいからアコーディオンが好きだっていう人を増やすのが最近の目標です。『なんだかよくわかんないけど、アコーディオン買ってきちゃった』みたいな、そういう衝動性みたいなものを焚き付けたい。ギターはよくそういう衝動買いがあったりしますよね。そのマインドが音楽には必要なんだろうなって。最初はこんなに本格的にやるつもりなかったけど、好きで続けていたらいつの間にかプロになってたんだよね、みたいな人も多いと思いますけど、そういう方々のスタートもやっぱり衝動性ですよね。ちょっと宣伝っぽくなってしまうんですけど、その衝動性を持続させるために最初の取っ掛かりになればいいなと、今度受注でボタン式のアコーディオンを私自身も販売しようと思っています。そこから始まることってきっとあると信じてるんで」

 

――確かに初期衝動ってとても強い力ですよね。そうやって新しいことでも試してみたりしている小春さんですが、今後どうなりたいとか展望はありますか?

 

「妹のもも(チャラン・ポ・ランタン/Vo.)とよく話をするんですけど、ここ数年J-POPの中にいるのに他のアーティストたちと同じ土俵に立たせてもらえてないんじゃないか、ということにずっと悩んでいて。インタビューや音楽番組などでも、J-POPなはずなのに『民族音楽のような』みたいな紹介をよくされていて、なんだか番外編みたいな扱いをされているのがすごい嫌だったんです。それは実は自分たちの強みだっていうことに後に知ることになるんですけど。でも本当にデビューして最初の5年くらいはずっとそれで悩んでいました。もっと普通にアイドルとかの曲を聴くように聴いてほしいのに、何でかしこまった紹介の仕方を皆するんだろう、みたいな。さっきも言ったように、通好みな音楽に思われたり。『チャラン・ポ・ランタン』を知っていると珍しい、通だね、みたいに言われるのが本当にやめてほしかった。アコーディオンっていうもの自体が独特の感じを出しすぎちゃっているのかも、とか色々悩んでいて違うジャンルの人と合わせてみたら何か新しいかもって思ってやったら昔から応援してくれている人たちから『何か違う』って言われたり。今何をするのが自分たちのベストなのか全然わからない時期でした。やたらと独特って言われるけど、自分たちは普通に作ってるだけなのにどこが独特なんだろう、もっと普通に聴いてよって。もう今は強みだったと知ったので平気ですが、アコーディオンがもっと身近で普通なものにしたいなというか、街中とかで普通に流れていても違和感がなくて、バンドやっている人たちがもうひとつ楽器入れたいと思ったときに普通に選択肢のひとつとして当たり前のようにアコーディオンって挙げてくれるようになるといいなと。でも、独特っていうのが別に悪気がないというか、別にJ-POPから逸脱してると思うから皆言ってるってわけじゃないって気付いたのはやっぱり『Mr.Children』のツアーに1年半から2年くらい一緒にやらせてもらったのが大きいです。もう本当にポップスど真ん中の方々を至近距離で見られて、しかも一緒に演奏もできて、色々気付かされたというか。ミスチルってすごいのがワンフレーズ聴いただけでもうちゃんとJ-POPなんですよね。そこに私のアコーディオンの音が入っても良い意味で何も変わらない。もちろん私の色はちょっとだけ入れられたとは思いますけど、ちゃんとミスチルのJ-POPになっている。それで思ったというか気付いたのは、独特だよねって感想は日本人の特性なのかもしれないけど、分類しようとしてできなかったから“その他”の代わりに使っていただけだったんじゃないかな。とっつきづらいから独特って言ってるわけではなく、新しいから分類ができなくて言ってただけだと気付いて、自分たちのオリジナリティとして大事にするべきところなんだってわかりました。結局、自分自身ちゃんとポップスをわかっていなかったんです。あの経験は本当に勉強になりました。それでちょっと話が脱線してしまったんですけど、一番の目標はジャンルになるってことです。J-POPの中にも誰々っぽい、みたいな言い方するじゃないですか。その誰々に『チャラン・ポ・ランタン』が入るようになればいいなと。誰かに目指してもらいたいし、ミュージシャンはカバーされてなんぼだと思っているんで。私がこの世を去ったあとも音楽はずっと残るじゃないですか。そして私たちの曲を後世の誰かが弾くことによってとんでもなく昔の音楽のはずなのに昨日作ったかのように新しく感じさせることができるかもしれないし、ずっと音楽は生きていける。誰かが憧れてくれてチャラン・ポ・ランタンっぽいバンドやろうよって、そうなってくれるとすごく嬉しいなと思います。なのでジャンルになりたいです」

 

――なるほど。それでは最後に、これからアコーディオンを始める人へアドバイスがあればお聞きしたいです。

 

「本番と同じフォーメーションや体勢、服で練習した方がいいと思います。本番すごい大変そうに演奏している人って大体演奏している体勢とかが練習のときと違ったりするんですよね。私は基本本番は立って演奏するので、練習中も立って演奏しています。立って練習するから脚が疲れるんですけど、でも本番と同じところが疲れないと意味ないなと。あと、さっき誰々っぽいってジャンルになりたいとは言いましたし矛盾してしまうかもしれませんが、アコーディオン奏者になりたいんだったら目指す人を作らない方がいいです。なぜならその人のことを超えることができなくなるから。アコーディオンが好きで、アコーディオン自体に憧れるのはいいですけど。もちろん、好きな演奏者はたくさんいて大丈夫ですよ! 私もたくさん好きな方はいるので。でも、憧れを作っちゃうとその人のフレーズに引っ張られたり、もしかしたらこの演奏の仕方って真似してるのかもって気にしだしてしまうので、それは自分の成長を止めてしまう原因になりそうだから、憧れの人は作らないようにしています」

 

 

――2020年10月28日にNEWアルバム「こもりうた」が発売されましたね!エピソードや思いのたけ、伝えたいメッセージなどありましたらお願いします。

 

「コロナで活動が困難になり、殆どの時間を家で過ごすようになって、「何もできない」という事が私にとってストレスになることに気付かされました。そんな中、チャラン・ポ・ランタンは8週連続で配信シングルをリリースすることにしまして、5月あたりから毎週1曲、私の家で初めて宅録をし、今回は自分でミックス作業も行い、シングルリリースの時はマスタリングまで自分で行いました。今までありがたい環境でずっと音を作ってこれていたことにも気付かされ、レコーディングの大変さも身に染みて感じた8週間でした。最期の曲をリリースした時に11周年の日がやってきて、今までとはまた違った達成感を感じたのを覚えています。最初の方の楽曲は、家の中のノイズ音(特に冷蔵庫の音)の消し方が分からず、そのままリリースされているのですが、それも含めて「作品」になりました。最後の曲にいくにつれて自分のレコーディングの腕も若干上がったりしておりまして、時の流れを感じるアルバムになっているかと思います。連続配信を全部詰め込んで、妹のボーカル ももと小春それぞれ「おうち時間」を象徴させる1曲をボーナストラックとして追加し、全10曲をアルバムとしてリリースしました。数年後に聴き直した時、そういえばそんなことあったよね、なんて笑って話せるくらいの世界になっていたらいいなと願っております。」

――ありがとうございました!

今回の他の撮影写真やオフショット等はSNSにたくさんアップされますのでチェックしてみてくださいね!

※2021年からは当サイトに小春さんのコラムが連載開始致します!皆様お楽しみに!

 

 

撮影:一色 卓丸 / ヘアメイク:鎌田 真理子  / スタイリスト:露木 藍 / Direction:蛇腹党

撮影協力:Bellows Works Tokyo , ロケ地:東京蛇腹店

衣装:ROBE JAPONICA https://robe-japonica.jp/(その他アクセサリー) Jabara Party https://jabaraparty.official.ec/

小春プロフィール

チャラン・ポ・ランタン オフィシャルサイト

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https://www.charanporantan.net/