Interview Vol.1 伊藤ちか子(Chikako Ito)

当情報サイトのインタビュー、記念すべき1人目は女性アコーディオ二スト、伊藤ちか子さんです。

※経歴・ライブ・活動情報及び英訳インタビューは文末にございます。(English translation is below,after the Japanese interview.)

――まずは伊藤さんとアコーディオンという楽器との出会いを教えてください。

「アコーディオンとの出会ったきっかけ、というかもともとアコーディオンという楽器から出る音が好きだったんです。最初は音として漠然と聴いていて、この音がどういうものから出ているのかもわからなかったんですけど、テレビとかラジオとか街中とかで流れてくる音の中に紛れているとハッとすることがあって。しばらくして、この楽器から出ている音なんだ、ということがわかって興味が湧いて、弾きたくなったとう感じですね。ぼんやりした出会いなんですけど(笑)」

――始められた当時、音楽は身近なものでしたか?

「普通に聴いていたくらいで、特に音楽にかかわっていたということも全然なくって。何か楽器を始めたいなとすら思っていなかったですね。そもそも音楽が好き、というよりもアコーディオンの音が好きだったので、アコーディオンの音を知らなかったら何もやっていなかったかもしれません。その音を聴いたときに起こる、ざわっとした感じが興味深くて。何だろう、これは? みたいな。弾いてみたらわかるのかなと思ったんですけど、当たり前ながら楽器を扱わなければいけないということにまずぶつかって。クリアしたと思ったら今度は人前で弾かなければいけないっていうとても大きな壁があって。それをまた少しずつクリアしていって、という感じで今に至る感じです。」

――今まで音として聴いていて気になっていた楽器を自分で始めたい、弾きたいって思うってすごく強い衝動ですよね。

「そうですね。その頃は若かったのでとても思い込みというのが強かったからかも。物欲に似てると思うんだけど、何かが欲しい、ものにしたいとかと同じで、これを弾きたい、弾けるようになりたいという本当に衝動のような感覚でしたよね。自分の人生でそんなにすごく大きい衝動ってあんまり感じたことないんですけど、その少ない衝動のひとつと言えるのかな」

――アコーディオンと過ごしてきた人生の中で、印象的なエピソードとかがあれば教えていただきたいです。

「やっぱりいろいろと初めての場所に連れていってもらえたことですね。あと、思いもかけないところで弾くことになったりとか。例えば、お芝居の中でも演奏させてもらうんですけど、お芝居の中で弾くなんて今まで経験したことなくて。実際練習したりしていると、お芝居の中の音楽ってこういうふうに出来ているんだ、とか新しい発見がありますね」

――今回撮影させていただいた「阿佐ヶ谷ヴィオロン」も思い入れがある場所だとおっしゃっていましたね。

「そうそう。初めて屋根の下で弾き始めたお店のひとつで。それまではずっと公園で弾いていた。それも若い頃の強い思い込みのひとつなんだけど、自分の苦手なところを克服しようと思って公園で弾いていたんです。人前で演奏するのがすごく苦手だからそれに慣れるためにっていうのと、あとは体力を付けたかったから。何時間も演奏する体力と気持ちの強さの両方を鍛えたかったんですよね。自分は日々の生活の中でこれをやる、みたいに規則正しいものをちゃんと決めておかないと何もやらないタイプなので生活の中に公園での演奏を組み込んでいました。そしたら公園で撮影場所の『ヴィオロン』という喫茶店のお客さんがお店に紹介してくれて。それでライブをやらせてもらったりして。今考えたらとんでもないですよね(笑)。よくやらせてもらえたなあ」

――オリジナルアルバムにまつわるエピソードだったり、曲の生まれた経緯や伝えたいことなどはありますか?

「自分の演奏を聴きたいなって思ってくれる人がいる場所になるべく普段から行って、その場所で弾けたらいいなって常々思ってはいるんだけど、それがなかなか出来ないくらい遠くに住んでいらっしゃる方とかに、日々生活している中でふと思い出したときに聴いてもらえればいいなあと思ってます。本当は生で聴くのが音楽は一番素晴らしいとは思うんだけど、なかなか聴いてもらえる機会もそう多いわけではないし、毎回来てもらうのも難しい。だからそういうときにCDを聴いてほしい。実はあまりオリジナル曲って作ったりしてないんです。なぜなら世の中にはすでに素晴らしい曲はたくさんあるわけで、そういう素晴らしいものをみんなで共有したり反芻したりすれば十分なんじゃないかと思っていて。だから、その素晴らしいものの中にこれだったらちょっと差し込んでもいいかなって思えるくらいのものが生まれたときじゃないとオリジナル曲を発表しちゃいけないような気がしていて。『夢の鍵』っていう自分の曲があるんだけど、それは一時期突然白昼夢を見られるようになったことがあって、そのとき生まれたもの。半分寝ているような状態なんだけど、自分では目を開いているつもりで何だか映像が見えていて。すごい特技を身に付けたって思って、だんだん自分で見たいと思ったときに繰り返し見られるようになったんです。このやり方は絶対忘れちゃうから覚えておきたいと思って、その白昼夢を見るためのコツみたいなものを曲にしたの。そのときはなぜか白昼夢を見たいって思ってたんだけど、今はそんなこと全然思わず。曲だけが残ったっていう(笑)。その当時は一人で喜んでたんだけど、今考えるとおかしいですね。何考えていたんだろう(笑)」

――確かに楽しむって大事ですよね。伊藤さんがお好きなミュージシャンってどなたですか?

「アコーディオン奏者だとたくさんいますね……中でもフィンランドのアコーディオン奏者でマリア・カラニエミさんという女性の方。素晴らしい奏者だなーって思います。あとはずいぶん昔の方だけど、ギュス・ヴィズールという方。ミュゼット時代の人なんだけど、本当にシャレていて色っぽい演奏で、こういう弾き方したらモテるだろうなーって。男性なんですけど、実際絶対モテてただろうなって(笑)。マルク・ペロンヌってフランスの方もすごく好きで、ディアトニック・アコーディオンを弾いている方なんだけど、とても深みがあってふくよかというか、懐が深そうな演奏で。しかも楽しそうに弾いている感じが聴いていてわかるし、素敵だなと。あと、ブラジルの方でドミンギーニョスさんという方がいて、この人の音も好きですね。4、5年前に亡くなった方なんだけど本当にシャレた演奏というか、ブラジル北部でお祭りのときの音楽を「FORRO」“フォホー”っていうんだけど、その音楽を弾いていたりして。この4名の方はとても尊敬していますし、すごく素敵な演奏をされる方だなって思ってますね」

――この4名は要チェックというわけですね。伊藤さんは教える側としても活動されていますが、上達のコツはありますか?

「自分でも知りたいですね(笑)。いまだに次の日の朝、起きたら弾けるようになってたらどんなにいいだろうって思う。なんて素敵な曲を自分は弾けるんだろうって思ってたら、ハッと目が覚めて夢だった、なんてことはよくあるんだけど(笑)。そうですね……くじけないで練習を続けていくためのコツを見つけることですかね。自分で自分を励ますでもいいし。練習したことって物を食べたら身体になるのと一緒で身に付くものだから、練習すれば絶対上手になっていってるんだって自分を信じこませたりとか。あとは素敵だなって思うアコーディオニストの曲とかを聴いて、そのフレーズがどういうふうな線で描かれているのかとかそういうものをちゃんと理解して再現出来るとうになること。一個一個の音も大切にした方がいいですね。ゆっくりと弾いて音の粒立ちをそろえるのも大事だと思うし、音の長さとか音量の微妙なニュアンスで聴こえ方ってずいぶん違ってくるので。あまり自分ではやらないけど、自分が演奏した曲を録音して聴いてみたりしてなるべく曲のイメージに近付けられるように客観的に分析して直していく、という作業をするといいかもしれないですね。自分の耳って自分に都合の良いように聴いているから、すごく辛い作業なんだけど(笑)。あとはとにかく体力作り!」

――ありがとうございます。最後にこれからアコーディオンを始める人や興味があるけどこれから聴いてみようと思っている人にメッセージをお願いします。

「アコーディオンって音も操作法もビジュアルもとても独特でおもしろい楽器です。なのでぜひ一度手に取ってみてもらいたいなって思います。弾いてみると楽しいから、まずは持ってみてほしいな。あと、これは私事なんだけど、自分が組んでいるバンド『カオルア』も去年で10周年を迎えました。ハワイアンでアコーディオンって始めた当時はとても珍しかったし、何もわからない状態でした。でもメンバーとかがすごく親身になってアコーディオンという楽器をどうやってハワイアンに取り入れたらいいかを一緒に考えてくれたし、自分だけだったらどうしていいかわかんなかったと思う。バンドって家族みたいな感じで、だからこそ“ファミリー”で作った音が出来上がっていると思うし、個人的にもすごく大事なものです。結構ハワイの方々にも好意的に聴いてもらえているから、やっぱり自分がやっていたことは間違ってなかったのかな、良かったなと思います。みなさんにもぜひ一度生で聴いて、一緒にアコーディオンの音を楽しんでもらいたいですね」

――ありがとうございました!

撮影:大崎 聡 / ヘアメイク:鎌田 真理子 / スタイリスト:露木 藍  / Direction:蛇腹党

衣装:JUN MAEYAMA http://www.junmaeyama.tokyo

アクセサリー:(イヤリング)Bichouette http://www.creema.jp/c/bichouette /(その他) jabara Party

撮影協力:名曲喫茶 ヴィオロン http://meikyoku-kissa-violon.com

伊藤ちか子 ピアノ式アコーディオン奏者
1995年頃よりソロ演奏中心に、ハワイアンバンド「KAOLUA」、切り紙影絵「シルク・ルミエール」、等ジャンルを超えて活動。
2007年にソロアルバム「伊藤ちか子 アコーディオン演奏集」KAOLUAとしては、2009年にアルバム「KAOLUA」、2010年コンピレーションアルバム「グレイテスト・ディズニー・ハワイアン」に参加。2013年セカンドソロアルバム「伊藤ちか子アコーディオン演奏集2 夢の鍵」を発売。2016年、2018年に舞台“マレーネ”に出演。
CD購入はメールでのお申込以外に下記の「カフェ マルディ」店頭で購入できます。
javala525@gmail.com
ブログ
http://chikakoito.exblog.jp/
個人レッスン受講可能
連絡先 メール
javala525@gmail.com

Interview (English)

―First, can you tell me how you discovered the accordion?

It didn’t suddenly happen one day. I always loved the sound of the instrument. Initially, I was just listening to the sound and didn’t really think about what instrument was producing it, but sometimes I was stunned when I heard it on TV or the radio. After a while, I realized what instrument it was, and took more of an interest, and eventually decided I wanted to play it. It was a gradual process rather than a flash of inspiration (laughs).

――Was music already a part of your life when you started playing the accordion?

Not really. I listened to music like most people do; I wasn’t especially involved in it. I didn’t even think I wanted to start playing an instrument. But I loved music, or rather, I loved the sound of the accordion, so maybe I would never have started playing an instrument if I had never discovered the accordion. I was intrigued by the frisson of excitement I felt when I heard it. What was it? I wanted to know! I thought I would understand if I played, but not surprisingly, I first had to learn how to handle the instrument. When I finally mastered that, I had to overcome my fear of playing in public, which was a tough and gradual process. And here I am!

――The desire to start playing an instrument that you had been listening to and found fascinating is a powerful motivation.

It is. I was young then, and perhaps stubborn as well. For me, it was similar to material desire. It was an urge to master something (in my case, to learn to play the accordion and play it well) that was just like wanting something really badly. I’ve hardly ever experienced such a powerful urge in my life. It was one of those rare experiences.

――Can you tell us about a memorable experience in your life as an accordion player?

Being taken to many places I’ve never been before, and ending up playing in unexpected locations and situations. For example, I will be performing as part of a stage play that’s starting soon. I’ve never done that before. I’m making new discoveries about how music in a play is structured when I practice for the performance.

――You mentioned that the place where we took the photographs for this article meant a lot to you.

That’s right. It’s one of the first indoor venues I performed in. Until then I always played in the park. One of my stubborn beliefs when I was young was that I had to overcome my weak points, which is why I played in the local park. I was nervous about playing in public, and I also wanted to improve my physical fitness. The idea was to strengthen body and mind so I could perform for hours. Practice in the park was slotted into my daily routine, because I’m the kind of person who doesn’t get anything done otherwise. And by chance, a patron of Violon (the café where we had the photo shoot) saw me in there and recommended me, and they asked me to perform.

――Who are your favorite musicians?

I have many favorite accordion players. I admire the Finnish woman accordionist Maria Kalaniemi. She’s an amazing performer. And going back in the days of musette, Gus Viseur, His playing is so sophisticated and sexy, it makes me think that if I played like him, I would be very popular with guys…I bet Gus was a chick magnet in real life (laughs). I’m also a great fan of Marc Peronne from France, who plays diatonic accordion. His performance is lush and has great depth and maturity. At the same time, you can hear how much he loves to play, which is so cool. Another favorite artist is Domiguinhos from Brazil. I love his sound, although sadly he passed away four or five years ago. His playing was so stylish! He played Forro, which is carnival music from North Brazil. I revere these four artists and find their performance exquisite.

――Thank you. Finally, what advice do you have for people who are about to start learning the accordion, and those who are interested in accordion music and want to check it out?

The accordion is a fascinating instrument with a unique sound and playing technique. For this reason, I would like everyone to pick one up. It’s such fun to play, so I want people to hold one as the first step. On a personal note, my band Kaolua marked its 10th anniversary last year. It’s an unusual combination of Hawaiian music and accordion! Come and hear us play!

 

最初のコメント "Interview Vol.1 伊藤ちか子(Chikako Ito)"

コメントを残す

メール アドレスは公開されません。


*