第拾話 筆者、バンドネオン五月病につき

 

第拾話   筆者、バンドネオン五月病につき

 

…..外道バンドネオン伝道師のマルヤマです。

 

夢のようなドイツの旅から帰国してしょんぼりしております。

良いこともかなりありましたが、妙な御土産を持ち帰ってしまいました。

 

「バンドネオン ≒ アルゼンチンタンゴ」「ドイツ vs アルゼンチン」のような図式が付きまとっており、バンドネオン事情に対して少しシラケています。

 

 

その結果、

 

相変わらず飯はウマイわ (ドイツのご飯も美味かったです)、

宝クジは全く当たらないわ (そもそも買いません)、

パチンコは全く出ないわ (そもそも行きません)、

 

散々です、とにかくバンドネオンのせいです!

 

おお、なんと恐ろしい

これはバンドネオン五月病に違いない!

 

って、このコラムが掲載されるのは6月下旬でした。(2019年6月です)

 

ああなんだ、5月じゃないのねヨカッタ!

五月病なんて気のせいなんですね!

全く問題ないですね!

 

 

……………….本当にそうでしょうか。

 

「バンドネオン五月病」は5月に限らず年中無休の24時間営業を予定しております。

ディープな気分は今後も続きそうですから、今のうちにこのコラムで憂さ晴らしさせていただきます。

 

 

 

 

 

 

などと言っているうちに前回のブツが届きました

 

 

某所にある筆者の邸宅 ’’ゲドウパレス’’に謎の荷物が到着!

誰が発送したかは事前にわかっているので謎ではありません。

 

この荷物はドイツからDHLで発送されたバンドネオンです。

日本に入ってからはEMS便、即ち郵便局による配送になります。

 

 

なんと、日本の郵便局と連携は取れておらず追跡情報はEMSに反映されません。

残念ながらインターネットの時代にこれです。ちゃんと荷物が届くだけマシではありますが。

 

 

今回の私のようにドイツの業者からバンドネオンを購入して心配な方は、DHLのサイトにTracking Numberを入力し確認しましょう。

 

このリンクは日本ではなくドイツのDHLです。

www.dhl.de/sendungsverfolgung

 

Tracking Numberは ’’XX000000000DE’’ のようにアルファベット入りです。これを「Sendungen verfolgen」の右の枠に入力します。

 

末尾の「DE」はドイツ語でドイツを意味する「Deutschland 」で国名コードです。

 

あれ? DHLの追跡番号は全部数字では?

いえいえ、日本のDHLは本件配送に関しては無関係です。

 

Tracking Numberはバンドネオン業者が荷物を発送の際にあらかじめ聞いておきましょう。

到着予定日が近づいても「なかなか来ないなあ」という時がありますが、日本に届いているかどうかだけでも確認できたらひとまず安心です。

 

ちなみに荷受け時には消費税、地方消費税、通関料を支払うことになります。

 

 

 

無事、荷受けしました。

オープン!

さらにオープン!

背負い式のソフトケースです。

これを開けると………

 

出ました!バイオレットのバンドネオンです。

禍々しいカラーリングがたまりません。

 

これだ!これを待っていた!

Bandoneon ’’ Viper-II ’’ 外道マルヤマ専用機 (Klaus Gutjahr 2019年)

 

 

筆者の1号機(2017年) は一つ前のモデルになります。

2号機を弾いたときの違いは以下のようになります。

 

 

1:ボタンのタッチが軽くやわらかい。指の力を抜いて演奏が可能、非常に弾きやすい。

 

2:リードチェンバーに通じる穴が拡大されており、ダイナミックレンジが増した。これにより最大音量も増し、スタッカート奏法に対応が可能となった。

 

3:穴の拡大に伴ってフラップが大きくなったためか、穴を完全に閉じるまでの時間がわずかに長くなった。その分演奏中の気密性は1号機にやや劣るものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

まさに外道!! 掟破りのボタン配列

 

 

筆者は元々 Rheinische式配列のビンテージバンドネオンを使用しておりました。

 

その後各種バンドネオンを購入、調査していくうちに Rheinische式配列が最適なものとは考えなくなりました。

 

そこで判明したのは Rheinische式配列において、明らかに使用しない同じ音「閉じ弾きのミ」が左右両側の 2つのボタンにアサインされているという点です。

しかも、この 2つは同じ音を出すボタンにもかかわらず近い位置に配置されています。非合理的ではないでしょうか。(赤丸で表示)

 

筆者はバンドネオンを始めてから今まで片方(とくに下段)の「ミ」のボタンは一度も使ったことがありません。

 

考案者は100年前のアルゼンチンで活躍されたバンドネオンの大先輩達(故人)でありますが、ハーモニクスのためにあえてそうしたとは考えにくいです。

 

これは割り当てミスでしょう。

大先輩達(故人)はこのコラムを読まれておりましたら来世までに悔い改めてください!

 

 

 

筆者は 2号機オーダーの際にKlaus氏との半年に及ぶ議論の末、下図のようなボタンレイアウトとしました。

 

見ましたか皆さん? 見ましたね? これが「マルヤマ式配列」です!

 

 

 

閉じ弾きの左右のダブりの「ミ」は「レ#」(左手: e → dis、右手: e’’ → dis’’)としました。(赤丸で表示)

 

右手の閉じ弾きのレイアウトに離れた位置に「レ#」をもう1つ配置することで、小指がどうしても右下端の「レ#」のボタンに対応できない際に緊急で他の指で対応できるようにいたしました。早速役に立っています。

 

さらに、左手側の最低オクターブの「レ#」を設けました。こちらも早速役に立っています。

 

Rheinische式配列の閉じ弾きには存在しない音でしたが、これは演奏上の制約にしかなりません。「ミ」にしておくのは無駄ですからRheinische式配列のビンテージバンドネオンユーザーの方は調律で「レ#」にしてしまうと良いでしょう。

 

 

加えて、右手側に最低音の「ソ」(g)を入れて音域を広げ、他数箇所をズラし結果的には Einheits式配列(German System)に寄せたレイアウトとしました。(青丸で表示)

 

ただし、開き弾き時の左上のボタン 最高音「シ」は犠牲にしました。

 

これで筆者は音域の制約を理由に諦めていた曲を転調せずに挑戦できます。こんなうれしいことはありません。

 

 

これには、アルゼンチンの先輩方(故人)も

「Rheinische式配列は 100年前からの伝統だぞ? マルヤマ、貴様はタンゴの歴史を冒涜するのか? この愚か者め!」とご立腹されることでしょう。

 

うへー、すいやせんお許しを!

 

 

いえいえ、筆者はむしろ「バンドネオン奏者一人一人がオリジナルの配列を研究しても良いのでは?」と考えております。

 

というのも、自分が好きな曲を自分好みの形で弾くことができるのは自分自身だけだからです。

 

 

とくに我々素人が楽器をする動機はほんのささいな事で良いのです。仕事ではないですからやりたい放題やって楽しみましょう。

 

別にバンドネオンをするからといってドイツにもアルゼンチンにも流される必要はないです。バンドネオンに対する固定のイメージはこの際忘れちまいましょう。

 

かといって、ボタン配列を攻め過ぎると全く弾けなくなる恐れがありますからご注意ください。

 

とことん意地悪でアヴァンギャルドで演奏困難な配列にするなどしたら案外おもしろいかもしれませんが、愚行に終わる可能性が大です。

 

結果、「弾けないなあ」と思っても転売が利きませんので、アート作品として玄関のオブジェまっしぐら!ネコが居たら爪とぎすること間違いなし!

 

 

 

 

 

筆者の独断と偏見による比較

 

 

筆者の独断と偏見による5段階評価で 2台の楽器を比較したところ下図のようになりました。

 

 

パワー:Alfred Arnoldのビンテージバンドネオンを ☆5としております。

 

気密性:1号機は出音に対して空気の流量が少なく済むため蛇腹が伸縮しにくく、折り返しに余裕があります。持続音は1号機の方が得意です。

 

汎用性:ジャンル問わず演奏できるポテンシャルを持っているかどうかはKlaus氏の演奏例により担保されております。32分音符も怖くない !?

 

操作性:2号機はボタン操作のやわらかさにおいて秀でております。数年弾き込んで蛇腹が柔らかくなれば1号機を凌駕する性能となることでしょう。

 

外道度:既存のバンドネオンからの逸脱をすると高ポイントです。特定の曲の演奏に熱が入るなどのスペシャルパワーがあるかも !?

 

 

 

うーん、同じ製作者なのにだいぶ楽器の特性が違います。

 

2号機はアルゼンチンへのちょっとしたカウンターのつもりでしたが、実はかなりタンゴ向きの性能です。気持ちよく弾けます。

 

バンドネオン3号機は外道度☆5 を目指したいです。2台を触っていればいずれ良いアイデアが浮かぶことでしょう。

 

3号機はとりあえずガンガゼのように長い棘を生やしていきたいです。

 

「オラオラ! 演奏中は近づくんじゃねえぞ!」みたいな牽制が出来て良いかも知れない。と一瞬思いましたが、譜面を覗き込んだ瞬間、自分に刺さりそうなので即却下!

ガンガゼ:ウニの一種。長い棘に毒があり、刺さると激しい痛みをおこす。

 

 

マ、3台所持しても持て余しそうなので今のところ購入予定はございません。

五月病だからといってうっかり日本円を全てバンドネオンに変換してしまうと破滅は確実です。

 

 

 

 

 

 

バンドネオン業者情報 ご報告

 

 

話題は変わるが、eBayで中古品の出品を度々見かけていた謎のバンドネオン「Jupiter」がついにそのベールを脱いだ!

 

これはAlfred Arnold、Klaus Gutjahrとは異なるコンセプトで製作されているバンドネオンだ!

 

バンドネオンに興味があるボタンアコーディオン奏者の方は必見!

これを機にバンドネオン野郎になりましょうね。

 

 

 

LLC Bayan Jupiter

http://www.bayanjupiter.com/

http://jupitermoscow.ru/

 

Bandoneon Jupiter紹介ページ

http://bayanmoscow.ru

ロシア語のページではありますが、問い合わせに対し英語対応も可能

 

 

 

LLC Bayan Jupiterは1992年から創業のバヤン(ボタンアコーディオン)の製作販売会社、CEOを務めるのは Сергей Баринов(セルゲイ バリノフ)氏。

 

現在、Bandoneon ’’Jupiter’’のプロデュースをしているのは国際コンクール受賞級のアコーディオン奏者、バンドネオン奏者である Maksim Fedorov(マキシム・フェドロフ)氏である。

 

彼にとってバンドネオンは楽器の中の一つに過ぎない。メインはあくまでもボタンアコーディオン(あるいは電子アコーディオン)である。

 

 

Bandoneon ’’Jupiter’’は2014年モスクワで製造開始された。ボディには天然のウォールナット材(クルミ科)を使用しており、その堅さから高品質な音色が発せられる。

 

 

[演奏動画]

Бандонеон Юпитер

https://www.youtube.com/watch?v=McPvC8BsQ7A

 

Piazzolla Double concerto III movement Tango bandoneon Jupiter

https://www.youtube.com/watch?v=9VkAu4IyNKA

 

Bandoneon ‘’Jupiter’’ 1st Version (2014)

Bandoneon ‘’Jupiter’’ 2017年頃のモデル

 

Bandoneon ‘’Jupiter’’ 現行モデル (2018年頃から)

 

 

ロシアのアコーディオン奏者の中にはアストル・ピアソラファンが一定数おり、そういった方がBandoneon Jupiter に食いつくのだそうです。

 

年間生産台数は約 10~20台、これは凄いです!

 

 

外装色は Brown(ニス仕上げ) と Black(セルロイド仕上げ)の2種類

左手 34 Button、右手 40 Button、148 Tone

 

発音はダブルリード (II/II)

リード及びリードプレートはチェコ共和国の Harmonika社製造のものを使用。

 

エアレバーとカバーを留めるネジは武骨なデザインだ。

楽器重量は 6.4 kgとやや重め。

 

ソフトケース付属で

価格は 6,720 € (= 823,000円程度、2019年6月時点)

 

 

ボタン配列はChromatic Cシステムに準ずるもので Manouri System(French System)が採用されております。

 

Bandoneon ‘’Jupiter’’のボタンレイアウト

http://bayanmoscow.ru/wp-content/uploads/2018/10/bandoneon-keyboard-jupiter-582×600.jpg

 

Cシステムのボタンアコーディオンからのスムースな移行を目的とした配列です。第弐話で少しだけ触れました Peguri Systemとは左手の配列が若干異なります。

 

 

ドイツの製作者 Uwe Hertenhauer氏の Manouri Systemのレイアウト(148 Tone)と同じもののようです。

http://www.bandoneon-hartenhauer.de/grifftabellen/bandoneonuh148ii.html

 

 

Klaus Gutjahr氏の Manouri Systemとは少し異なりますのでこちらもチェックしてみてください。

http://www.klausgutjahr.de/franzoesisches-system.html

 

 

ボタンアコーディオン奏者でバンドネオンの音色を好む方のみならず、これから始めたい方に Uni-Sonicのバンドネオンは非常にオススメです。

 

必ずしもBi-Sonic あるいは Rheinische式配列(Argentine System)や Einheits式配列(German System)が正義というわけではありません。

 

バンドネオンの未来に興味がある方は一つの選択肢として前向きにご検討ください。

 

 

 

 

……..おおっと、もうこんな時間だ。

タイヤのローテーションがあるので今回はこれにて失敬

 

 

 

 

 

 

 

外道バンドネオン奏者 マルヤマ

[経歴]
1982年静岡県生まれ。東海大学電子情報学部電気電子工学科卒業。電子音楽の研究、電子楽器の衝動買いなどをするうちに何故かバンドネオンの魅力にはまり、2012年より小川紀美代 氏にバンドネオンを師事。2018年9月より蛇腹党に入党し、外道バンドネオン伝道師として自身の独断と偏見に基づいた記事を執筆している。