第捌話 ドイツ編 Klaus Gutjahr工房訪問 Part 1

第捌話    ドイツ編 Klaus Gutjahr工房訪問 Part 1

毎度どうも、外道マルヤマです。

前回のコラムは真面目過ぎたかな? とやや反省しております。
今回はかなり凄いです!

 

 

 

唐突ですが、ドイツに行って参りました。

 

それは何故か?

バンドネオン製作者であるKlaus Gutjahr氏の工房を訪問し、御本人と直接お話をするためであります。

 

「演奏の腕前はさておき」「英語の理解度はさておき」「ドイツ語はさっぱり」と個人的な問題は多々ありますが、そんな事を言っていたら渡航の機会を逃してしまいます。

自分が使用している楽器の製作者と話ができるなんて夢のようです。
ええい、バンドネオン信徒である以上は行かねばならんのだッ!

 

 

で、蛇腹党一行はベルリン・テーゲル空港に到着!
中央のコンベアから荷物が吐き出される瞬間が待ち遠しい!

 

 

 

テーゲル空港からバスに乗り、ベルリン中央駅 (Berlin Hauptbahnhof) に到着!
開放的で美しいガラス張りが特徴だ。

 

 

 

一行が宿泊するホテルの前でKlaus氏と待ち合わせ。
Klaus氏は非常に親切で、なんと我々を自家用車で迎えに来てくださったのだ!

写真でお分かりいただける通りヨーロッパでは路上駐車が主流だ。右側通行、左ハンドル車の運転は筆者はちょっと遠慮しときます。

 

 

 

ついにKlaus Gutjahr氏の工房に到着、これがひみつ基地の入り口だ!
Google Mapでは絶対わからない場所だ!

 

 

 

 

Klaus Gutjahr 氏の経歴

 

Klaus Gutjahr氏は、1948年にザクセン=アンハルト州で生まれた。
彼の家族は1950年にレバークーゼンに引っ越し、Klausは8歳の時に兄のウォルターと共に父親からバンドネオンを習い始め、12歳になる時にはバンドネオンを中心に音楽を作ることを決意していた。

1964年に家族はブルシャイトに引っ越し、Klausは瓦職人としての職業訓練を終えた後、1968年にベルリンに行き音楽の勉強を始め、1975年に州立音楽院(現在の芸術大学)で州公認の音楽教師として卒業した。

以来、彼はミュージシャンとして働いており、Klaus Hoffmann, Erika Pluhar, Eva Maria Hagen, Hannes Wader, Wolf Biermannらと共演をした。

Klausが大学で研究中、世界中でどこもバンドネオンを生産していなかったため、1970年代初頭にバンドネオン製作を開始、1976年にオルガン製作者 Werner Baumgartnerと共に最初のバンドネオンを完成した。

1980年代の初めに、Klaus は集中的にアルゼンチンタンゴを扱うようになった。
これを可能な限り研究するために、彼は1984年から1990年まで毎年ブエノスアイレスを訪れた。 知り合ったバンドネオンソリスト達は今も彼の友人である。

1989年にブエノスアイレス滞在中、Astor PiazzollaがKlausを招待し、バンドネオンに関する数時間に及ぶ議論を交わした。その後は互いに協力し合うようになったという。

Hから a’’’ までフルクロマチックの音域を持つKlausのバンドネオンは、ルネサンスとバロック時代の音楽を楽譜をアレンジすることなく演奏することを可能としており、バッハのプレリュード、フーガなどのオルガン曲、アルゼンチンタンゴのソロアレンジが現在の彼のレパートリーの一部となっている。

 

 

 

 

大切なのは音楽だ         ─── Klaus Gutjahr

 

 

Gutjahr Bandoneonは「楽器である以上、どのような曲にも対応できる性能でなければならない」という考えのもとで作られています。

例えばバッハの曲を演奏する際は、ボタンからのノイズや蛇腹から空気を抜く音を生じさせることは演奏上決して許されるものではないのです。Klausには一切の妥協はありません。

 

第陸話でも紹介しましたが、それが下記の項目を満たさねばならない理由となります。

1) チューニングの安定性
2) 開き弾き時と閉じ弾き時が同じ音色であること
3) 反応性の高いリード
4) 広いダイナミックレンジ
5) 全てのボタンの反発力が一定かつ開閉機構に不具合がなく完全であること
6) ボタンフィールドからのノイズがないこと
7) 蛇腹からの空気漏れが一切ないこと(高い気密性)
8) 音の響きに適した木材を使用

 

 

 

蛇腹(bellows)を製作するための型枠を前に熱弁するKlaus氏
使用する革の品質にもこだわられている。

 

 

 

 

筆者がオーダーしている 2号機の共鳴枠(右手側)、まだ塗装がされていない。
木で作られたこのループを指先で叩くと心地の良い音が鳴る!

外装には材料となる木材のストレートな部位のみを使用する。
響きの良さに直結するので歪んだものはNG。接着にはホットグルーを使用する。

 

 

 

ここで Klaus氏は、

「プロのバンドネオン奏者達は度々 『バンドネオンは難しい楽器だ。』『私達(バンドネオン奏者)は特別なんだ』という過剰なアピールをしている。そういうアピール文化なんだ。
だが、本来は楽に弾けるはずだ。バンドネオンは特別な楽器ではなく普通の楽器に過ぎないのだから。」

と言い放った。さらに、

「アルゼンチンの奏者の弾き方は開き弾きが 90%以上だ。彼らは蛇腹を戻す際にノイズを生みながら演奏している。これは良くない。」

と、辛辣な意見を述べた上で

「Astor Piazzollaの片足立ち弾き、あれはパフォーマンスに過ぎないんだ。本人がそう言っていたよ。」

と暴露!

 

 

今更そんな事を言われても、ピアソラスタイルが好きな人は「片足立ち弾き」をやめられないだろう。

「片足立ち弾き」は今ではスタンダードな奏法だ。
見た目はクールだが、デメリットを伴うので初心者に推奨される弾き方ではない。

ピアソラさんだって「座奏」で閉じ弾きを駆使してバッハの曲を練習していたのだ!
まずは無理せず「座奏」で行きましょう。

 

 

 

German styleではこのように楽器を45度傾けて演奏する「斜め構え」がスタンダードだ。

この構え方はベテランのGerman Concertina奏者にも見受けられる。「座奏」だけでなく「片足立ち弾き」も可能。

 

フラットな構えと比較して

・手が奥に入るので遠くのボタンに指が届きやすい。
・演奏中の指の力を抜きやすい (とくに「親指」には全く力をかけない)
・蛇腹の操作がラク
・椅子の高さが普段と多少違っていても影響を受けにくい

というメリットがある。

 

 

 

 

 

Klaus氏から「斜め構え」の説明を受ける筆者
「もっと指の力を抜くんだ。掌台には手のひらを触れないように。」とKlaus氏

力が抜ける感覚は少し味わえましたが、筆者はこの構え方ですと

・指とボタンの位置感覚が全くわからない
・内側のボタン操作はラクだが、外側のボタンに全く指が届かなくなる
・楽器の角が腿に当たって圧迫感がある
・楽器をバランスよく45度で維持できない。(重力で下がってきてしまう)

という問題に直面してしまいました。

移行にはかなりの勇気が要りますが、興味のある方は是非試してみてください。

 

 

 

 

次回、第玖話 Part 2 につづく

 

 

 

 

 

 

 

外道バンドネオン奏者 マルヤマ

[経歴]
1982年静岡県生まれ。東海大学電子情報学部電気電子工学科卒業。電子音楽の研究、電子楽器の衝動買いなどをするうちに何故かバンドネオンの魅力にはまり、2012年より小川紀美代 氏にバンドネオンを師事。2018年9月より蛇腹党に入党し、外道バンドネオン伝道師として自身の独断と偏見に基づいた記事を執筆している。