第拾弐話(最終話) まさに外道!バンドネオン祭り
どうも、ナメた記事執筆歴 四千年の外道マルヤマです。
実はちょうど1年になります。
その間バンドネオンに関して色々と書きましたが、皆様は一通りおおよその知識を得ることが出来たかと思います。
ただ、このような与太記事をダラダラ読み続けても仕方ありません。
この先は自分で調べて実行し、自分の目で確かめて下さい。
コラムはこの拾弐話で最終話となりますのでご安心ください。
今回の表題に「バンドネオン祭り」とありますが、ボリュームが多いだけです。蛇腹党本部に来ても白いお皿などはもらえませんのでご注意下さい。
では、前回に引き続きQ&Aコーナーから参りましょう。
今回のメイントピックはこのQ&Aです。
外道マルヤマQ&A集
このコーナーでは読者の皆様から筆者が受けた質問について可能な限り回答したりしなかったりします。
Q:マルヤマさんへの質問です。バンドネオンの押しの配列、なぜ同じミの音が2つあるのでしょう。それも近い位置に。
A:Rheinische式配列の閉じ弾きに関する話題ですね。
質問者の方は第拾話の記事ではやや納得いかないご様子ですね? よろしい!
筆者も少し気になっていたのでアルゼンチンの専門家に問い合わせを行いました。
先に申し上げますが、結果として明確な回答は得られませんでした。
100年前のアルゼンチンの大先輩達は閉じ弾きの2つの「ミ」のうち、どちらか片方の「ミ」を別の何かにしようと仲間内で検討していたもののドイツのように「統一(Einheits)」はできなかったようです。
当時の話については、ボタンの数を増やして楽器をオーダーした100年前の大先輩であるセバスティアン・ラモス・メヒア氏、ファン・マグリオ氏あたりが詳しいはずです。
ただし、故人の方ですのでイタコ等を利用してお話を聞くと良いでしょう。せっかちな方は集合的無意識にアクセスすると良いです。頑張って下さい。
さて、Rheinische式配列はドイツ側から見たら「不統一(Uneinheit)」式とでも言うべきでしょうか。むしろそこが良いんですよ!
例えば、左手側の閉じ弾きのカスタマイズに関しては存在しない「レ#」にしようか「ド」にしようかというところですが、両方便利なので悩むところです。
仮にカスタマイズしたとしてもそれは個人的な方針に留まりがちです。
当事者がお亡くなりになるまでに後世に対しカスタマイズに関する経緯説明はされないままです。
「我が門派のこのレパートリーを弾くためには必ずこのボタンの配列が必要だ」のような必然性がなければ継承されなくて当然です。
結果として、このようなうやむやな状態が続く事により「ミ」が2つある状態がアルゼンチンのスタンダードな配列として維持されたのです。
これはちょっとしたロマンです。
あえて余地として残されたものと考えたらなかなかお得な気分ではありませんか。
アルゼンチンの奏者の中にはこれを疑問に思い、自分が使いやすいようにカスタマイズをする方が稀にいるようです。
そもそも各々が自分好みの配列の楽器をオーダーしたりカスタマイズするのはある意味当然でそれが本来の姿です、自分が弾く楽器ですから。
「アルゼンチンではとにかくこれなんだぞ!」とそのまま弾いても全く問題はございません。あなたの楽器です。
バンドネオンはまだ楽器として進化の過程にあるものです。
皆さんもカスタマイズを検討されてはいかがでしょうか。
あと今更ですが、筆者を呼ぶときは名前の前に必ず「外道」を付けるようお願いします。
Q:私は今古いドブレアーを使用していますが、ぼろ過ぎて最近困っています。新品のバンドネオンが欲しいです。今のところクリンゲンタールのUwe Hartenhauerさんが気になっています。どんな楽器なのか情報をご存知でしたら何か教えてください。
A:下記リンクの バンドネオン奏者 Philippe Ollivier氏の記事はいかがでしょう。
https://www.philippeollivier.com/en/a-propos-de-mon-bandoneon-hartenauer/
このPhilipe氏はビンテージのAlfred Arnoldを2台愛用されていたようですが、演奏中の不具合発生に度々悩まされていたようです。
その後、彼は新しい楽器を求めてクリンゲンタールの2社を訪問しました。
Bandonion & Concertinafabrik Klingenthal GmbH
https://bandonionfabrik.de/en.html
Uwe Hartenhauer
http://www.bandoneon-hartenhauer.de/
結果、2006年5月にUwe Hartenhauer社のモデル「MAYOR」 Manoury System仕様を注文。
同年10月には無事に納品され、エイジングを地道に進行し、2017年4月の記事執筆時の段階ではご本人は非常に満足されているご様子。
という内容です、素晴らしいですね。
ただ、Philipe氏の試奏時の感想は購入当時 2006年時点の情報です。
それから10年以上経過しておりますので、上記 2社の製品は大幅に改善されているはずです。
筆者がUwe氏に問い合わせしたところ「発音」「左右の音のバランス」「気密性」いずれに於いても自信満々の回答をしていただけました。興味がある方は問い合わせしてみてください。
Q:クセロー式や他の配列のバンドネオンは、楽器の外装や作りに違いはありますか?
A:結論から申し上げますと、どのバンドネオンも基本的な作りは同じです。
あとは各メーカーの方針によってマイナーチェンジ、オプションや独自の工夫、あるいは無茶なオーダーに対応した結果そのようになったという物もあります。
Kusserow Bandoneon は説明が長くなる & 現物をお目にかかる事はほぼ無いためコラム第弐話では割愛いたしましたが、今回はトコトン回答いたします。
Kusserow SystemのBandoneonは分類上「Uni-Sonicのバンドネオン」ではありますが特殊です。
事の発端は Julius Zademack (1874-1941年)という方が新しいUni-Sonicバンドネオンの製作を試みたことです。それはPeguri Systemとは違うコンセプトになります。
そもそも Einheits式やRheinische式に馴染めない方がいるために「Bi-Sonic? 開き閉じ2通りで苦労するのは無駄じゃないか? 結果的に曲が弾ければ良いじゃないか?」という動きが起きているのです。
やがて Ernst Kusserow (1897-1979年)というバンドネオン奏者が、Julius Zademack氏のバンドネオン開発に途中から携わり1925〜1926年辺りに見事完成。その後、Kusserow氏自身が各地で演奏活動をしつつ名を広めたのがこのKusserow Bandoneon であります。
ただしUni-Sonicバンドネオンとしてはマイナーな存在です。
さて、そのErnst Kusserowに師事されていた方がベルリンに居ります。音楽学校でクセローバンドネオン教師をされているBernd Machus氏です。
この動画では演奏と楽器説明がされています。
https://www.youtube.com/watch?v=CXcRjLx210Y
一方こちらの動画も同氏による演奏ですが、前半はKlaus Gutjahr製 Kusserow Bandoneon、後半はAlfred Arnold製 Kusserow Bandoneonでの演奏です。
ちなみに Klaus Gutjahr氏もまた ベルリン芸術大学でErnst Kusserowに師事していたという過去の持ち主です。
https://www.youtube.com/watch?v=9g-s4_JWOCY
左手側ボタンの連動に注目です。ボタンアコーディオンにもこのような機能がありますね。
ここで資料として Kusserow Bandoneonの一例をご紹介いたします。
この個体は Alfred Arnold社による戦後の品です。
製造年は少なくとも 1945〜50年あたり、もしくは1950年以降である可能性が濃厚です。
Alfred Arnoldの工場は1948年で閉鎖ですがそれ以降に関係者が少人数集まって製作販売した物のようにも思われます。
外装はセルロイドで色はグレー。フチの縞模様が特徴的なやや大型の楽器です。
Alfred Arnold製 Kusserow Bandoneon外観
左手側(低音側)についてですが、太いベルトに手を通した上で、掌台の穴の部分(画像に赤枠で表示)に親指を掛けて演奏します。右手側がこのような形になっているKusserow Bandoneonも存在します。
Uni-Sonicの左手側 53ボタン、右手側 46ボタンですが 99ボタン × 2(開き、閉じ) = 198音ではありません。実際は182音となります。
実はこの個体の左手側には連動ボタンが16箇所ありますので、それらは発音数としてカウントしません。
さて、Uni-Sonicのバンドネオンの中でもクセロー式は限られたスペースの中にボタン数を多く設置する方向で進化したものです。
欠点は楽器が大型化し重量が増しがちな点、部品が密集しているためトラブル発生時のメンテナンスが厄介という点です。
ここで、この個体のサウンドボードの写真をご覧ください。
Alfred Arnold製 Kusserow Bandoneon サウンドボード
なるべく多くのボタンを楽器に搭載するために、ボタンが平行四辺形状に均一の狭い間隔で配置されています。それによって部品の配置は限界まで最適化されています。
サウンドボード上の部品の配置は一定のパターンになっており合理的です。他のバンドネオンと基本的な構造は同じですが、コンセプトが明確でエレガントです。
裏側の写真はお見せできませんが、発音部はアルミプレートが使用されたダブルリードでした。
Alfred Arnold製 Kusserow Bandoneon ボタン配列表
この個体のボタン配列の特徴ですが、右手側は左から右の列に向かって半音ずつ高くなるよう配置されており、且つ上から下の行(遠くから手前)に向かって徐々に高くなるように配置がされています。
おっと、左手側に関してはルールが異なります!
左手側は上から下の行に向かって半音ずつ高くなり、且つ左から右の列に向かって徐々に高くなるよう配置されています。
それだけではございません。
もう一つの特徴として、Uni-Sonicのバンドネオンで起こりがちな「どうしても指が回らない状況」を回避するために少し離れた位置に同じ音階の予備のボタンをある程度の間隔をもって割り合てがされています。これは緊急回避用のボタンです。
これはPeguri Systemの欠点を改善するための明確なアプローチです。
再度、ボタン配列表をご覧ください。
左手、右手それぞれ対になるものを赤色と青色で示しました。このペアは全く同じ高さの音を発するためのボタンです。
また、左手側のサウンドボードのみですが、金属製のアームが木製のアームを延長するように固定され、これが各ボタンの間を縫うようにクネクネ配置されております。
その上、1本の金属製アームの上に 2つのボタンが固定されております。これによりどちらかのボタンを押した際に必ずフラップの開閉がされます。この個体ではそのようなペアが16箇所ありました。
それに対し、右手側はフォロー用のボタンを横にズラして配置しているためアーム及びリードの共有はありません。(左手側と異なりボタンの連動はございません)
このコンセプトを理解できる方は是非、クセロー式バンドネオンに挑戦して頂きたいです。
新作バンドネオン業者にオーダーした場合、喜んで引き受ける業者と全く対応できない業者に分かれることでしょう。
ちなみにKusserow SystemのBandoneonには、今回資料として紹介した個体と音の高さと配置の上下関係が逆になったものも存在します。
即ち、下から上の行に向かって音が高くなるよう配置されたKusserow Systemです。筆者はそのような楽器の存在も確認しております。
どちらにせよPeguri Systemと比較すると直感的にわかりやすい並びではあります。
一方、Peguri SystemはあくまでもBi-Sonicのバンドネオンから派生したものです。その外観を崩さないレベルでの配列変更となっております。
なお、Kusserow Bandoneon には既に 究極形態 が確認されております。
Karl Oriwohl (1917-2011年)専用機です。
これはバロック音楽を演奏するために作られた巨大なUni-Sonicバンドネオンです!
製作者はHarry Geuns氏です。このページに紹介写真がございます。これ以上大型の物は今後の人類史において出現し得ぬものと思われます。
http://bandoneon-maker.com/rare-kusserow/
一方こちらは Karl Oriwohl氏による演奏動画です。ドイツ式の斜め構えです。
この個体には空気抜きレバーの代わりにボタンが設置されています。
https://www.youtube.com/watch?v=TrHXFHP_QVk
Karl Oriwohl氏は子供の頃、視覚障害に苦しんでいました。しかし、彼は特殊能力として常人とは桁外れの記憶力を持っていました。
そして、15歳からバンドネオンを開始。特殊能力はバンドネオンに非常に適していたようで、その後奏者としてメキメキと頭角を現していったようです。
しかも、彼は Kusserow Systemのみならず各種ボタンシステムでの演奏も研究されていたようです。これは恐るべき事です。
しかし、そのような長年の研究により先程のような規格外の楽器をHarry氏にオーダーするに至ったのでしょう。
また、Karl Oriwohl氏は奏者としてだけでなく、コレクターとして最も有名な方でした。
‘‘バンドネオンの壁’’と呼ばれた 故Karl Oriwohl氏のコレクション
これはバンドネオン界隈で有名な写真です。
故Karl Oriwohl氏の120平方メートルのアパートにはこのような世界最大のコレクションがありましたが、現在は散らばって各地の博物館やコレクターの所蔵品となっております。
中には怖そうなバンドネオンがチラホラ……このように攻めた仕様のものを見ていると自分自身が元々持っていた「バンドネオン」のイメージなんぞは簡単にあやふやになってしまい非常に愉快です。
中でも Kusserow SystemのBandoneonはオーナー毎に自由なルールでボタン配列されがちです。ボタンの数の種類も多様です。そのようなパイオニアの方が一時的に大量発生したは良いですが、その後各流派の演奏技術はほぼ継承されていないご様子です。これは世界大戦が主な要因です。
各種クセロー式バンドネオンのビンテージ品は現存数が少ないため非常に貴重です。ELA社のLuis XVに匹敵するくらいレア……おっと、このコラムでのLuis XVの説明はまだでした。
ちょうど良い流れなのでこちらも説明いたします。
ELA製 Luis XV 1928年製造 外観
これは単に外装装飾が豪華なバンドネオンです。見栄っ張り仕様とでも言いましょうか。
おそらく最初のオーナーは新品購入時に無地のバンドネオン 2台分以上の料金を支払っているのではないでしょうか。
このような上品な品は銀座三越あたりで常時陳列販売していただきたいところです。
画像をご覧ください。いろんな箇所がくねくねしたデザインになっております。
手工業でこれを製造するには相当な労力をかけられているはずです。
迷惑がかかるので新品バンドネオン業者には復刻を依頼しないようお願いし…..いや、ロマンがある楽器ですから意外と業者側が乗り気になるかもしれません。今は工作機械もありますし。
Luis XVは1800年末期から1900年初頭にかけて製作販売されました。通常のものと比べて生産数が少ないため激レアです。Alfred Arnold社も製作しましたが、数としてはELA社製のものがほぼ占めています。アルゼンチンに輸出されたものはもちろんRheinische式です。
発音はダブルリードですが音源にアルミプレートが使用された物がほとんどで、やはりそのような物は楽器としての価値はやや低めです。(観賞向け楽器としてシングルリードの個体も若干存在します。)
しかし、左右ヘッドの曲線的デザインが優雅な雰囲気を醸し出しており美術品としての価値は高いです。
実際はこの出っ張りのせいで片膝弾きでないと演奏しづらいです。出っ張りに加えて、少し楽器の長さがあるのでソフトバッグに収まりにくいです。なんとアルゼンチンではLuis XV用のバッグも用意されています。
Luis XVのほとんどがアルゼンチンに現存するためビンテージ品の入手はほぼ不可能だと思いますが、欲しい方は狙ってみてください。
演奏者にとってはなんでもないですが、コレクターにとってこのLuis XVを所蔵品に加えることはなかなかステータスです。
筆者は日本国内において Luis XVの所有者を勝手ながら 3名ほど確認しておりますが、相当なマニアとお見受けしております。
最後にもう1つ特殊なものをご紹介します。
これは Arno Arnold社の1960年代のバンドネオンです。
Arno Arnold はAlfred Arnoldの兄Wilhelm Paul Arnoldの息子にあたります。
現在も同社は「ARNO ARNOLD GMBH」として存在しておりますが、ドリル、スプリング、機械向けの蛇腹機構などとにかく機械の部品を作る会社です。
それらは過去のバンドネオンの部品や蛇腹製作のノウハウを活かしたものではありますが、同社は1971年を以って楽器事業からは完全撤退されており、現在は全くバンドネオンと関係ない会社です。
読者の皆様はバンドネオンに関する問い合わせやお手持ちのバンドネオンのアフターフォローの依頼などは一切なさらぬよう予めご承知おきください。
Arno Arnold製 Rheinische式+特殊配列バンドネオン 外観
Rheinische式配列にボタンを追加した特殊仕様になっています。
ボタン配列表 (Rheinische式+特殊配列)
表の通り紛れも無くBi-Sonicです。おもしろい楽器です。
右手側:トリプルリード、左手側:ダブルリード (III/II)です。楽器重量は 8kg程度。
右手側はアコーディオンをエミュレートしたものでなんとレジスタ機能(4種類+リセットボタン)付きです。トリプルリードということもありフラップ形状は縦長の穴を覆うように大型化しています。
右手側のサウンドボード 表と裏
右手側ケースに切り替えボタンが設置されており、これを操作すると赤枠で囲った箇所の金属の棒が可動し、内部(リードチェンバー入口)でシャッターが動きます。
これにより演奏中に特定のリードブロックへの通気をoffにし、同時発音数をトリプルからシングルあるいはダブルに変更することが可能です。アコーディオンでは当たり前の装備ですが非常に良くできています。
サウンドボードの裏側をご覧頂くとわかる通り、リードプレートがセパレートされたものとなっております。
このようなアコーディオン寄りのバンドネオンは音色もそうですが、大型で取り回しが良くないため、バンドネオン奏者からは比較的冷たい視線を受けていますが資料的価値は高いです。
調べ物をする際、時には身銭を切る必要があります。読者の皆様の中でこのようなバンドネオンに興味のある方は入手し、実際に触ってみることを強くお勧めします。
Q:マルヤマさんオススメのバンドネオン奏者を知りたい。
A:強いて言うならば、筆者は「バンドネオンソロ」にしか興味がございません。中でも自作曲を演奏されている方がはっきりいって最強です。
コラム内で列挙している方はいずれもオススメ奏者です。
他にも有名無名関係なく凄い奏者が各地に居りますので好みの方を探してみて下さい。
そんな事より筆者を呼ぶときは名前の前に「外(以下略)
Q:バンドネオンを独学で習得することはできますか
A:筆者は最終回だからと少し油断しておりました。
このコラム上で最も厄介な質問です、質問者の方やっちまいましたね。
独学での習得をしていない筆者に対し、このような質問をする意図は理解し難いですがトコトン回答します。
ここで朗報です!
あなたのようにやや残念な方であってもバンドネオンは可能です。
おめでとう!さあ、今すぐ開始して下さい。
バンドネオンは良くできた楽器です。なんと、ボタンを押しながら蛇腹を操作するだけで必要な音が鳴ってしまいます。Uni-Sonic, Bi-Sonicに関わらずです。
これはとんでもなく親切な仕様です。悪魔の「あ」の字もないくらい親切ですよ!
もちろんどの楽器も突き詰めていけば難しいですが、バンドネオンは敷居に関しては低いです。大正琴やヴィオリラ(YAMAHA)に匹敵する親しみやすさです。
例えばトランペット、チェロ、テルミン、モジュラーシンセサイザーなどは非常にスパルタです。始めていきなりまともな音など出やしません。
これらはバンドネオンより圧倒的に難しいですから確認してみて下さい。
バンドネオンは高度な演奏を要求されない限り、楽器の中では比較的イージーな部類です。
その証拠に筆者のような「いい加減な野郎」でも少しずつ練習の成果が出ております。楽器のコンディションありきではありますが優しい楽器です。
ですから、バンドネオンに対して必要以上にビビらないでいただきたいです。また経験者の方も入門希望者を必要以上にビビらさないでいただきたいです。
金銭的な抵抗感は仕方ありませんが、心理的な抵抗は必要ありません。興味のある方は気軽にホイホイ始めていただきたいです。筆者はバンドネオンより「太鼓の達人」の方がずーっと難しいと思っています!
あと、ブラジルジョインビッレの小中学生がサクサク弾いていることを常にお忘れなく!
さて、あなたがバンドネオンする理由はさておき、モチベーションを維持できるかどうかが重要です。
「PDCA」でも「CDPA」でも「OODA」でも「CDDA」でも「CAPD」でも「NYPD」でも「TNMT」でもなんでも良いですから、自分自身に対しフィードバック制御を適用しましょう。行動してから結果がわかるまでは時間がかかることがありますからのんびりトライしてください。
大丈夫です、万が一「バンドネオンがつまらねえ」と思った時は速攻で辞めれば良いのです。代わりに何か他に楽しいことがあるはずですよ。
あとは質問者様ご自身でお確かめ下さい。
今更ながらお薦め図書
ところで、このコラムはバンドネオンの内部構造の説明をロクにせずに淡々と部位名称を記載しつつ進行する非常に不親切なコラムといえます。
「実は、内部説明は筆者ごときが改めて語るような内容ではありませんし、国内外の専門家のサイト内で充分触れられているためあえて控えたのです。」
という言い訳を筆者はたった今思いつきましたが、単に後回しにしたまま忘れていただけです。
「バンドネオンを自分で開けるのは怖いし、中がどうなっているかよくわからないや」という方は下記のリンクで販売されている本の後半部分を読んでおけばまず安心といえましょう。
タンゴ: 歴史とバンドネオン – 舳松 伸男 (著)
出版社: 東方出版
新装版
旧版です。(内容は同じ)
著者の舳松氏(故人)はバンドネオン奏者です、これは1991年に出版された本です。
舳松氏がバンドネオンを購入する際に Uni-SonicとBi-Sonicのバンドネオンどちらを選ぼうかという場面がスリルに満ちており非常に熱いです。
これはバンドネオン野郎必読の書ですから今すぐクリック & 購入してください。
自分用、保管用、布教用 と1人最低 3冊購入することをオススメします。
先に申し上げておきますが、「コラム第壱話、第弐話あたりの早い段階でこの本を読者様にお薦めしやがれ」という苦情は一切受け付けません。当局は一切関知しないからそのつもりで。
男なら黒でキメろ!!
「黒いバンドネオン持ってっけど、純正の外装色は光沢があって黒さが足りねえ。こいつはクールじゃねえ。このままじゃ俺らしくねえぜ!」
「茶色のバンドネオンなかなか渋くて気に入っているけど。ぼかァ黒い方がモテるんじゃないかと最近思うんだ。ま、今のままでも年中モテてるけどな!」
そのような、キザな野….ご不満をお持ちの方は居りませんか?
朗報です。
イギリスのスチュアート・センプル氏が販売している「ブラック2.0」 でバンドネオンの外装を塗れば解決です。
カルチャーハッスルストアサイト (直販)
BLACK 2.0 アクリル塗料 マッドブラック 150ml
人工の最も黒い物質として世界記録を誇るベンタブラックは可視光の99%以上を吸収する驚異の黒さを誇っています。
今回おススメする「ブラック2.0」もそれに匹敵する黒さです。漆黒を超えたブラックホールのような黒さを楽しんでください。
光沢の無い黒ですから無地のバンドネオンでしたら冠婚葬祭での演奏にも適しているかと思います。真のブラックバンドネオンです。
ただし「とにかく黒が好き」「俺は半端な真似はしない」などと言って、外装のみならずボタンまで塗ってしまいますと非常に不幸な結果になると思われます。
ボタンへの塗付は我慢いただくか、あるいは同サイトで販売されている蓄光塗料「LIT」の方が良いかも知れません。
イケイケなパリピ型バンドネオン野郎は外装をこの蓄光塗料で塗ってしまえばアゲアゲ確実!
ブラックライトに照らされた熱いステージと熱狂的な客が君のパフォーマンスを待っているぞ!(テキトー)
バンドネオン ヲ コウニュウ シマシタカ (y/n)?
ところで、楽器未所持の方はちゃんとバンドネオンを入手できましたかな?
なんと「筆者のコラムを第壱話から読んでいるけどまだ買っていない」ですと?
……一体何をやっているんですかな? 信仰心が足りませんな。
とりあえずあなたは今日から
バンドネオンは最高です。
バンドネオンは最高です。
バンドネオンは最高です。
バンドネオンを買うぞ。
バンドネオンを買うぞ。
バンドネオンを買うぞ。
と毎日 4時間おきになるべく大きい声で唱えましょう。周りの目が気になる方は起床後と就寝前だけで結構です。
そして、第参話にて紹介の「バンドネオン友の会」に参加し洗脳を受けて、原稿用紙 200枚分の感想文を蛇腹党本部に提出しなさい。
あなたがチンタラしている一方で、このコラムをきっかけに既に複数台衝動買いしている強者が日本各地に出現しています。
時間は有限です!
決意が固まり次第サラ金でもカードローンでもいいですからお金を用意してバンドネオン買っておっぱじめてください。
そして見事、自分の手になじむバンドネオンを入手できた方は末永く大事にしてください。
保管、運用の際は、直射日光、高温多湿、暴風雨、潮風、盗人、満員電車、怨念、隕石落下、ガンマ線バーストに注意しましょう。
Never End…
今回で最終話です。
筆者はコールドスリープに入ります。シーズン2は今のところ予定しておりません。
筆者邸宅のアトリエから未発表の原稿が偶然発見される可能性も今のところございません。
サバラ!
外道バンドネオン奏者 マルヤマ
[経歴]