今すぐ、バンドネオンを開始せよ! 第壱話

今すぐバンドネオンを開始せよ!

  第壱話

こんにちは、下衆で外道なバンドネオン野郎のマルヤマです。演奏の腕前はさておき、私にはバンドネオンに対し若干熱いものがあり、このようなコラムを開始することになりました。

早速ですが、練習開始は早いほうが良いです。なにかのきっかけで気になるバンドネオンを見つけたら即、衝動買いしてください。「思い立ったら吉日」ということわざがありますね。

今の時代、Webで検索すれば大抵の欲しいものは見つかりますね。非常に良い時代です。

バンドネオンは果たしてそうでしょうか。検索で探してみてください。

タイミングを逃せばその楽器は二度と手に入らなくなります。良さそうなバンドネオンは他の人も狙っているのです。仕様、見た目、大きさ、操作性、ボタンの多さ、あるいは直感でピンと来たら、自宅を担保に入れてでも購入してください。

もちろん下見が可能であれば行った方が納得のいく買い物になるでしょう。ただ、古いバンドネオンは常に不具合発生のリスクがあるため、どちらにせよあなたの予想以上の修理代がかかります。とにかく「買い」です。

万が一、購入した楽器が自分に合わないなと思った場合はその楽器を手放せばよいのです。時には損をすることもあるでしょう。トライアンドエラーを繰り返して自分に合った楽器を見つけることが重要です。自分に合わない楽器を使い続けると練習が苦になります。練習が続かなければいずれ楽器を手放すことになり、結局時間を無駄にすることになります。

 

ホントウニ バンドネオン シマスカ (y/n)?

図1:Alfred Arnold ライニッシュ式配列

バンドネオンとして最も重宝されているのは、ドイツのAlfred Arnold社(AA:ドブレアーと呼ばれる)、またはELA(Ernst Louis Arnold)社で戦前に製造され、且つアルゼンチン輸出仕様(ライニッシュ式配列)のものです。「ライニッシュ式配列」についてはそのうちご説明します。

Alfred Arnold社製のバンドネオンは第二次世界大戦前後に製造中止されております。戦前に製作されたバンドネオンは製造から80年以上経過するものがほとんどであり、演奏可能な状態のものは年々減っています。

また、2009年にアルゼンチン議会は、製造から40年以上経過したバンドネオンの輸出を禁止する「バンドネオン保護法」を制定しました。この法律によってバンドネオンの相場価格は上がりました。ウルグアイ経由などでアルゼンチンからの楽器流出の可能性はわずかに残っておりますが、基本的に違法となります。

加えて、アルゼンチンタンゴという音楽ジャンルは、この戦前に製造されたバンドネオンに大きく依存しているため、プロ演奏者の手に楽器が供給されなくなれば終焉を迎えることになります。(あるいは黎明期の演奏スタイルに戻れば問題は有りません)

新作のバンドネオンの製作販売は既にドイツを主として行われておりますが、戦後のバンドネオンの出来が良くなかったせいか新しい楽器への偏見が残っており、Alfred Arnold社製の性能に匹敵するものであってもアルゼンチンタンゴ演奏者にはほとんど受け入れられておりません。

さらに悪いことに、古いバンドネオンのうち、特に戦前に作られたものは楽器としてだけでなく、コレクターのためのアンティーク品としての価値があります。数が少ない上に、状態の良い個体の入手は非常に困難となります。

仮に楽器を購入できたとしても古いバンドネオンは不具合の発生頻度も高く、修理費用が度々かかります。よって、あなたのお住まいの近辺に修理業者がいるかどうかは非常に重要になります。

率直に説明すると、バンドネオンを楽器に選ぶ人の大半はアルゼンチンタンゴやアストル・ピアソラさんが好きで、その人達同士で古いバンドネオンを奪い合っている状況であるということです。

そんな状況の中で1人が何十台も所持しているケースもあるようで見苦しいです、筆者は上品で争いを好まない性格(?)なのでこれ以上この話題に触れたくありません。

よって、アルゼンチンタンゴに興味のない方は無理に戦前のバンドネオンを手にする必要はありません。自分の目的に合った楽器を選ぶことをオススメします。

これについては次回をお楽しみに!

外道バンドネオン奏者 マルヤマ

[経歴]
1982年生まれ。電子音楽の研究、電子楽器の衝動買いなどをするうちに何故かバンドネオンの魅力にはまり、
2012年より小川紀美代 氏にバンドネオンを師事
2018年9月より蛇腹党に入党し、外道バンドネオン伝道師として自身の独断と偏見に基づいた記事を執筆
バンドネオンの閉じ弾きが大好物